ライティングツアー作品集

テーマ:小浜の誇る四十物(あいもの)(2018/11/10)


INDEX

  • 若狭は遠けど美食の地~「小鯛のささ漬け」編
  • 小浜で出会ったお父さんの味
  • 杉香る鯛の味
  • いい塩梅
  • 癒し系ゆるキャラ店主が作るこだわりの醤油干し

若狭は遠けど美食の地~「小鯛のささ漬け」編

吉武 恵美子(横浜市在住)

 

 福井県小浜市。新幹線、特急そしてローカル線を乗り継ぎ4時間以上もかかってたどりつく、若狭湾に面した港町・・・しかしただの港町ではなく、この地の「若狭もの」の名は、高級海産物として、美食を愛する人々には、今でもよく知られているのではないでしょうか。そう、若狭小浜は、都と深いつながりのある、御食国(みけつくに)。若狭湾であがった新鮮な海産物を、遠く離れた都に、より美味しく届けるため、さまざまな加工、保存法が発達してきたそうです。

特筆すべきは鮮魚と干物の中間である「四十物」(あいもの)。

 

 「小鯛のささ漬」はその一つで、連小鯛(れんこだい)が、豊漁の際に始められたものです。

 

 その作り方は、三枚におろし、塩をふり、酢で絞めて、杉の樽につめると極めてシンプルな工程。昭和33年よりささ漬けをつくる㈲上杉商店の上杉耕一郎さんは「朝どれの冷凍ではない魚、何より塩の振り方が味の決め手。」とのこと。また、同店のオリジナルとして、バッテラ昆布がはさまれているのが旨味増幅のポイント。食べ方は、刺身やすしネタとして、生で味わうのがおすすめ。

 

 新鮮な素材そのものの味わいだけではなく、ひと手間加えることでより美味しいものに変身させる、若狭小浜の「四十物」。まだ未体験の方、美食探求の旅に出てみませんか?

 


小浜で出会ったお父さんの味

立見 茂(高月町在住)

 

 福井県南西部、若狭地域のほぼ中央に位置している小浜市。その住宅街の一角に、鮮魚の加工販売、予約制でランチ営業を行なう中村商店はある。

 

 この日訪れた私を、店主の中村久代志さんが出迎えてくれた。寡黙な第一印象を受けたが、ひとたびカメラを向け質問攻めにすると、ニコニコとよく笑いながら、奥さんと一緒に何でも答えてくれる。 本来ならば中村さんと呼ぶべきなのかもしれないが、なぜかお父さんと呼びたくなる。そんな人だ。

 この日見学させてもらったのは鯖の醤油漬けの作業工程。鯖を切り、醤油に5〜10分漬ける。そのあと一晩干せばできあがり。それだけだ。長年の経験があれば細かいルールなんていらない。中村さんが作ったもの、そのすべてがこの店の商品になる。そんな印象を受けた。いただいてみると鯖本来の味と醤油の香ばしさが感じられ、ご飯やお酒にもとても合いそうである。

 そんな中村さんの商品は近くの道の駅やオンラインショップで買うことができるのだが、できることならば直接お店へ出向くことをおすすめする。 中村さんと会話をすることが、どんな一流の料理人にも味付けできない絶妙の調味料となるからだ。


杉香る鯛の味

金光 さくら(若狭町在住)

 

 

 「真空にすると、鯛の綺麗な赤の色が残る。でも、ほんまは杉の樽に、そのまま入れて一晩寝かしたものが、一番うまい。杉が余計な水を吸い取り、鯛には、ほのかに杉の香りがつくんや。」

福井県の西側にある海沿いのまち、小浜。古くは都へ海産物を送り続けた歴史がある、豊かな海の幸に恵まれたまちだ。漁港には、毎日大量の魚があがる。

 

 「小鯛のささ漬け」の老舗、上杉商店も毎朝、新鮮な連子鯛を仕入れるため、漁港へ出向く。港からほど近い調理場へ戻れば、すぐに作業が始まる。午前の内に鱗と頭を落とす。午後には、一口で食べられるよう3枚におろし、塩を振って酢に漬ける。酢漬けの時間は、鯛の身の白さを見てその都度決めて、鯛の身の締まりを見て塩を抜く。鯛の身の間に、味のアクセントになる昆布を挟み、一枚一枚、杉樽に詰めて行く。

 

 これらの工程はすべて、人の手で行う。慣れた手つきで淀みなく、丁寧に。その姿は、職人だ。素人目には、一見、大胆にも見える作業の美しさは、おそらく長年の感覚が支える技なのだろう。

 

 昭和30年頃、小浜漁港にたくさん連子鯛があがった事が「小鯛のささ漬け」のきっかけだったそう。獲れすぎて困る連子鯛をどうしたものかと、小浜の魚問屋と京都の料理人が考案した、淡白で上品な、ハレの日の味だ。杉樽の蓋を開けると、鯛の脂と混ざり、まろやかになった酢の香りが食欲を誘う。白いごはんにひと切れそのまま載せて、パクッと一口。引き締まった鯛の身から、柔らかな酢が香り、新鮮な脂の旨味が口の中に広がる。

 

 毎日、150kg。都市部や県外で小浜の味を楽しみにする人の手に届く。杉樽に鯛の身そのまま詰められた、足が早いこの味は、地元では味わえない、贅沢な小浜の海の味だ。


いい塩梅

今井 紗耶香 (福井市在住)

 

 福井県の若狭湾中央に小浜湾がある。湾の恵みが帰ってくる小浜漁港を間近にのぞみ、北川と南川が合流し海に注ぎこむ地域、城内地区。

 

 ここに、昭和33 年創業から、当時の製法を大事に守りながら小鯛ささ漬けを作り続けてきた「上杉商店」がある。小鯛ささ漬は、明治の終わりから、この辺りで豊漁であったレンコ鯛の活用方法として、酢漬けにして販売したのが始まりだ。新鮮なレンコ鯛が、ささ漬へと出来上がっていく過程を見学させていただいた。

 

 小浜湾から揚がる、オレンジとイエローゴールドが混じった、薄貝殻のような鱗を持つ生のレンコ鯛を、捌き方の女性達が手際よく三枚に卸していく。この技は慣れるまでに10 年はかかるそうだ。大切に捌かれたレンコ鯛を丁寧にザルに並べ、いい塩梅で塩を振る。

 

 塩の持つ旨さを引き立たせるため、2 種類の塩を使用している。

 2 番目は、水にさらす。この水は、名水百選に選ばれた「雲城水」で、さらに元始活水器を通したこだわりの水。水にさらす時間もいい塩梅を見計らうそうだ。

 3 番目に、米酢に5 分程漬ける。10 分では長いそう。これもまたいい塩梅を狙うとのこと。

 最後に、樽に丁寧に重ねていく。上杉商店では、ここでバッテラ昆布を身と身の間に挟み込んでいく。この昆布は、昆布を削っていった芯の部分。量はあまり取れず、削る職人も少なくかなり貴重だそうだ。

 

 「高いんだよな~。」と耕一郎さん。けれどもやめる気はないそう。「昆布が挟んであって、美味しかったよ。」と喜んでくれたというお客様の話をする耕一郎さんの顔は、満面の笑みだ。ささ漬を語るその目も、とてつもなく優しい。

 

 その日のお昼に、上杉商店のささ漬けを頂いた。今まで食べた、どのささ漬けよりも美味しく感じたのは、耕一郎さんのささ漬への想いと笑顔を思い出したからだろうか。

 

 「いい塩梅で、美味しかったです!」と伝えたくなった。


癒し系ゆるキャラ店主が作るこだわりの醤油干し

坂田 聖子(小浜市在住)

 

 

 

 その店は日本地図の真ん中あたり、日本海側若狭湾、福井県小浜市水取の閑静な住宅街に位置する。

「何で街中や商店街の中にないの?か」

店主のこだわり?「そんなに儲けなくて良いから」との“緩-い~返事にビックリしたが、商品に対する愛情と心意気にやっぱり職人だと惚れ込んでしまった。

 

 醤油干し作りの行程は生の鯖を三枚におろす。

 次にこだわりの、北陸の醤油に5分から15分漬け込む。

 最後に外で干す、外側が木枠の網“す”に並べゴマをふる。

 

 たったこれだけだが(失礼)魚を捌く作業では、大きさの異なる鯖を的確にそして丁寧に血合い等取り除く。

その作業をするにあたっての、作業動線のあまりの見事さに驚いた。

左側調理台に生魚のバット、真ん中は洗い場、右側の調理台におろした魚をおくバット。

魚をおろすまな板を、真中の洗い場をメインに端を左右の調理台に10cm弱架ける。

まな板の左側を15㎝ほど上げ、上がったことによってできる三角形のスペースに、魚をおろすときに出る汚物を入れるかごを置き、さばきながら落としていく。

日頃の家事にも役立つ!!

醤油の漬け込みは、職人のカンで魚の油具合などで漬け込み時間の調整。

そして、もう一つ最後の行程が終わった後、魚を見つめる店主の優しい眼差しに、この干物に命が吹きこまれる瞬間を見た気がした。(魚たちも幸せだなぁ。)

 

 こんな店主が作るとびっきりの醤油干しをぜひご賞味あれ。

味は、余計なものがないシンプルな、しょうゆ味。甘すぎず辛すぎず程よい旨み。それに、ありきたりだが愛情が溶け込んでいて、ふっくらとしているのに程よい弾力を感じた。

「美味しくて栄養あるし」と、笑顔でゴマをたぁくさん降っていた店主が、私の中の映像に蘇った。日本海の海水、小浜の水、風、ゆるきゃら店主の腕?夫婦愛、どれ一つ欠けてもこの味は出ない。

 

 奥様に聞いた「この店で一番美味しいいのは卵焼き」という、幻の卵焼きこちらも食したい。予約限定ランチでのみ味わうことが出来るそうです。

 

 最後に「後継者がいない誰か来てほしい」の言葉が胸に刺さった。